講演者：井上 克也 氏（広大院理）
日時： ５月　１８日（水）　　午後２時００分から
場所： 青山学院大学　理工学部（相模原キャンパス）Ｌ棟６階　Ｌ６０３室

題目： 「透明キラル磁性体の合成・構造・磁性」

要旨：
　分子磁性体の研究は、約３０年前に始まった比較的若い研究分野であるが、
現在では設計指針がほぼ確立され、転移温度も室温を超えるものが知られてい
る。分子磁性体の特徴は、設計が可能であること、結晶性ものが多く光に対し
て透明であることなどが挙げられる。これらの特長を生かして、キラル磁性体
の構築研究を進め、既に１５種類近くの透明なキラル磁性体を合成している。
キラル磁性体では、不斉構造から生じる光学活性（コットン効果）と、磁性体
が示す磁気光学効果（ファラデー効果）を同時に示し、さらにこれらの協奏効
果である磁気不斉二色性と呼ばれる新しい効果を示すと考えられる。また、こ
れらの結晶内には静電的分極が存在すると考えられ、非線形光学効果を有し、
さらに磁気スピンの配列に静電分極が影響を及ぼす結果、ヘリカルやコニカル
磁気構造を誘起し、新しい磁気構造を持つと考えられる。今回は化学的な合成
の見地から、構造、設計指針、合成法を中心に紹介する。

参考文献
K. INOUE, S.-i. OHKOSHI, H. IMAI, Chiral Molecule-based Magnets,
J. S. Miller & M. Drillon Eds, Magnetism: Molecules to Materials V,
Molecule-Based Materials, Wiley-VCH, Weinheim, 41 (2005).
H. Imai, K. INOUE et. al., Angew Chem. Int. Ed., 43, 5618 (2004).
A. Hoshikawa, T. Kamiyama, A. Purwanto, K. Oishi, W. Higemoto, 
T. Ishigaki, H. Imai, K. Inoue, J. Phys. Soc. Jpn., 73, 2597 (2004).
K. Inoue, K. Kikuchi, M. Ohba, H. Okawa, Angew. Chem. Int. Ed., 42,
4810 (2003).

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共催：　青山学院大学　理工学会