講演者: 内野倉 國光氏(理化学研究所磁性研究室) 日時: 10月 17日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「スピンギャップ系における不純物誘起反強磁性相 ---特にハルデン物質PbNi2V2O8について---」 要旨: 10年ほど前に我々はCuGeO3という(S=1/2の)一次元スピン系と みなされる物質がスピンパイエルス転移をすることを見出した。 スピンパイエルス転移は古くから知られ、新しい物質が 見つかってもそれ自体に特別の意味があったわけではない。 しかしこの物質は初めての無機のスピンパイエルス物質で あること(多分現在でも唯一の無機スピンパイエルス物質であろう)、 また良質の大きな単結晶が育成できること、鎖間相互作用が強く、 一次元スピン系としては良くない、次近接相互作用が強いなどの、 従来の有機のスピンパイエルス物質とは異なった特徴を持っていた。 このため、スピンパイエルス転移に関しても、CuGeO3独自の 性質についても非常に詳細な研究がなされた。 その中で、全く新らしい現象としてS=1/2のスピンを持つCu^2+をたとえば 非磁性(S=0)のMg^2+で置換すると反強磁性相が生ずる事が発見された。 この現象を不純物誘起反強磁性と呼ぶことにする。 CuGeO3において不純物誘起反強磁性相の研究は詳しくなされたが、 我々はこの現象(スピンギャップ系において不純物誘起反強磁性相 が生じる)がS=1/2の一次元スピン系に限らないであろうと信じ、 その具体例を探した。代表的なスピンギャップ系としてはS=1の 一次元スピン系が知られている(いわゆるHaldane物質)。 我々は物質自体としても、新しい物質である、PbNi2V2O8が Haldane物質であることを1998年に見出し、しかも同時に この物質で不純物誘起反強磁性相を見出した。したがって 不純物誘起反強磁性がS=1/2の系に限らず、もっと一般的な 現象であることを示した。 この講演では、ハルデン物質PbNi2V2O8とその不純物誘起反強磁性相 を中心として、話をする予定である。 --------------------------------- 共催: 青山学院大学 21世紀COEプログラム