講演者: 前田 啓一氏(東京大学・院理・天文) 日時:  7月 18日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「極超新星とガンマ線バースト」 要旨: ガンマ線バースト(GRB)は大量のガンマ線/X線をバースト的に放出する 現象であり、(放射が等方的であるとすると)ガンマ線領域の放射エネル ギーだけで約10**52 ergにも達する。その正体は発見以降約30年にわたり 解明されていないが、バーストに伴う残光現象の発見を引き金とした多く の研究により、現在では、少なくとも一部(バーストが数秒以上継続する タイプ:ロングバースト)は数十太陽質量程度の大質量星の進化末期の 重力崩壊に伴う現象であると考えられている。 1998年にはGRB980425のエラーボックス内に超新星SN1998bwが検出され、 ロングバーストと超新星が同起源、大質量星起源であることの最初の直接 的な証拠となった。SN1998bwは非常に特異な超新星であり、特に(光学)ス ペクトル中の吸収線幅が非常に広いという特徴を持っていた。このことは 物質の膨張速度が速いこと、従って爆発の運動エネルギーが大きいことを 示唆する。爆発が等方的であるとすると爆発エネルギーは10**52erg以上 にものぼり、これは通常の超新星のエネルギー(10**51erg)の10倍以上であ る。一方で、ガンマ線バーストを伴わないがSN1998bwと同様のスペクトルを 持つ超新星がその後数例発見され、これら爆発エネルギーが通常の超新星の 10倍程度の超新星を総称して極超新星と呼ぶ。今年3月にはGRB030329の光 学スペクトル中にSN1998bwに非常に良く似た超新星のスペクトルが検出され、 SN2003dhと名づけられた。これは、ガンマ線バーストが重力崩壊型(極)超 新星を起源とすることの決定的な証拠となった。 本講演では、上記のガンマ線バースト/極超新星の関連について紹介する。 (1)GRB980425とSN1998bwの性質。エネルギー、非球対称性など。 (2)極超新星SNe1998bw、1997ef、2002apの性質。観測的性質 (スペクトル、光度曲線)とそこから導かれた物理的性質 (質量、エネルギー)について。 (3)GRB030329/2003dhについて、現段階での状況と予備的な結果。 GRB030329可視残光スペクトル中に現れた超新星成分SN 2003dhと 他の極超新星スペクトルとの比較など。